キャラメル横丁 -> 北名古屋市(旧・師勝町)歴史民俗資料館 企画展 -> エッセイ「大須ゆめ横丁」

HANZO
駄菓子エッセイ
昭和20〜40年代の名古屋・大須通商店街界隈
あそびっ子 (1)〜(5)  (6)〜(11)  連載(12)〜(18)

[連載12回]煮込みうどんと鍋焼きうどんの違い(1)

すっかり名古屋名物になった味噌煮込みうどんだが、鍋焼きうどんとの違いを、単に味噌仕立てかそうでないかの違いとおもわれている方が居られたので、名古屋人のわたしがちょっと蘊蓄(うんちく)を申し述べたい。

鍋焼きうどんを味噌仕立てにすれば「味噌鍋焼きうどん」になりますし、味噌煮込みうどんをしょうゆ仕立てにすれば「煮込みうどん」になりますね。そういうネーミングで商っておられるうどん屋さんもおられます。味噌の「あるなし」ではありません。「はい」

簡単にいってしまえば、煮込み用の麺には塩水が使って「なく」て鍋焼き用の麺には塩水が使って「ある」の違いなのです。

煮込みの麺には塩水が使ってないから、火にかけた土鍋に直接生の麺を茹でることができ、茹で上がるとそのまま供することができます。塩水が使ってあると茹で上がってから一度水に晒さなければ塩辛いものになりますからね。

手打ちの煮込みうどんを食べますと少しどろっとしていますが、くっつかないようにとまぶした粉がそのまま入っているからです。(つづく)


[連載13回]煮込みうどんと鍋焼きうどんの違い(2)

●煮込み用のうどんの製法(手打ち)
中力粉を捏ね鉢に入れ真水を注ぎ入れ、良くこねあげます。粉と水がなじんできたら、丸く固めます。延べ板にとりだし、めっそうで、人数分に切り分けた小口の「はま」(捏ね上がったうどん粉のかたまり)にしていきます。このまま半日以上風を引かぬように濡れた布で包んで甕(かめ)等に入れ寝かせます。
あとは寝かせてあった「はま」をとりだして延べ板で延ばしうどんに切ればいい。

●鍋焼き用のうどん(手打ち)
(特に鍋焼き用としてつくるわけではなく、うどん用を流用する)粉はおなじ中力粉をつかう。塩度数が10〜20度の塩水を使う、夏場になるほど度数をあげるが20度が上限。塩度数が上がると「大はま」が堅くなり捏ねるのに力がいるようになる、不慣れな人が塩度数の高い「大はま」をこねるとどうしても練りの足りない力不足な下手なうどんになりやすい。小口の「はま」にしていくのは同じだが、寝かせて熟成する時間を長くとります。二日間は寝かしたい。透明感のあるうすい黄色味を帯びてくると「あがり」だ。
あとは延ばしにはいるわけだが、煮込み用の「はま」より二、三倍は堅く粘りがあるので、だれもが足踏であるていど延ばしておくようだ。一枚延ばしただけで真冬でもしこたま汗をかくほどの力業である。
注文があったら、大釜で茹で上げ(茹で上がると塩分がぬける)水で晒してから、あらかじめ火にかけてあった土鍋に入れて供する。(つづく)


[連載14回]ショートストーリー・鍋焼きうどん

 伊吹おろしと称される北風がすっかり葉のおちた銀杏の樹を揺らしている。
 午後十時をまわって冷え込みも一段ときびしく、歩道を歩く人の姿もちらほらと少なくなった。ほとんどの商店もきっちりと戸を閉めて引きこもってしまった。
 並んだ商店にはさまれて、ぼんやりとしたあかりを灯した長提灯が掛けられ、そこに大筆書きで「うどん」と表された店がある。
 いま、職人風に髪を短く刈り込み、厚手のジャンパーをはおった男が暖簾をかきわけてその店に入っていった。 「たいしょう、熱いの一本たのんますわ、きょうはさむいねぇ、雪でもふるんかねぇ」といい、置かれてある丸い火鉢に手をかざした。
 「さむいねぇ、すぐに熱いのつけるからねぇ」と店の奥から声がした。
 「つまみに「いたわさ」でもつくってぇ、腹がへってさむうて寝られませんわ、それと、ちょっと後でええから、あっつい鍋焼きうどんもたのんますわ」
 「あいよ、鍋焼きね。兄さん、風邪でも引いたんかねぇ、声がおかしいよ」
 「そうらしいわ、熱もないし、たいしたことないおもいますが、熱いの喰って頓服でも飲んで寝たろうおもってねぇ。たいしょう、うどん屋とんぷくありますか?」
 「はいはい、ありますよ新しいのが、そこの隅に吊ったります。つい、せんだって、富山の薬やさんが換えてったばっかりのが」
 当時(昭和三十二年頃)どういうわけか、下町のうどん屋さんには「うどん屋とんぷく」と書かれたB4版ほどの袋に入った風邪薬が置かれてあった。ばら売りで、うどんを食べたあとで一袋飲んでいく。 「はい、鍋焼き、おまちどうさん、熱いから火傷せんようにね」
 「兄さん景気はどうかね、まともに年は越せそうかね」
 「いけませんなあ、しぶいですわ、そんでもまあ、こうして寝しなに、たいしょうとこで、一本の酒とうどんをすするぐらいはできますから「ええ」ですかね」


[連載15回]板前(1)

 名古屋の下町、大須という処の裏通りに小さな料理旅館がありました。親父さんが板前でお母さん、息子、娘の四人だけで営んでおりました。息子のまさるくんとは幼なじみで、腹減らしの学生の頃、よく昼飯や晩飯を食べさせていただきました。
 親父さんは、無愛想な人でしたが、優しい人で、短く刈り上げた頭に、寿司屋さんのようにいつも鉢巻きをしていました。
 私の実家も直ぐ近くでうどん屋を営んでおりますので、その関係で、親父さんは、私たち二人を時々呼んでは、料理の仕方を教えてくれました。そ の中で、何度も何度も繰り言のように聞いたことがあります。
 それは、料理人とお客さんでは、同じ物を食べても、味わい方を違えなければいけないといわれました。
 お客さんは、出された料理を、美味い、不味いと言っていればそれでいいが、料理人になるためには、こころして、舌を育てなければいけない、おだしは効いているかとか、塩や醤油や味醂や味噌や酒や砂糖の加減はどうか、材料の味はよく表にでているか、一口一口、確かめて、食べなければ味覚というものは育って行かない、上手な料理人になるためには、いつもいつも、そうやって食べる習慣をつけなさい。包丁さばきや見せ方の技を憶える前に、まず舌を研ぎなさい。と言っていました。
 腹減らしの餓鬼である私たちには、半分がとこ馬の耳に念仏でしたが、あまりに何度も聞いたので、いまだに憶えています。(つづく)


[連載16回]板前(2)

 それと、もうひとつ、食べ物の好き嫌いは人間だから当然あり、それは仕方ないことだけど、嫌いなものでも、食べられるようにしなくちゃいけない。人参の味を知らずに人参を料理してはいけない。
 お客さんに出す物はどんな物でも味見をすること。味を知っていること。初めての味で嫌いになった物は得てして遠ざけようとする、嫌いにどんどん塵が積もり、払っても払っても塵がとれず、もう、食べられなくなってしまう、(食の刷り込み現象=hanzo注)そうすると半端な料理人になってしまう。
 嫌いと思っても、無理をして食べていれば、食べられるようになる。好きになったりもする。人の味覚とは、そういうものだ。といわれました。
 いま、私は、料理人ではありませんが、その親父さんのお陰で、人が普通に食べる食物で食べられないものは何一つありません。
 腐り系味の食品でいうと、強烈な臭いのくさやの干物でも、米の腐った味の鮒ずしでも、好きではありませんが、食べられます。なまぐさ系の食品ですと、かつおやかますの内臓の塩辛は好物です。勿論苦手だった人参も出されれば食べております。
 親父さんに感謝しております。
                                (板前;おわり)

[連載17回]うどん

 大阪では油揚げを甘く煮込んだ具の入ったうどんを「けつね」といってますが、名古屋で油揚げの入ったうどんは「しのだうどん」と言っています。
 名前の由来は、現在の大阪府「和泉」の旧村名が信太(しのだ)なんだそうで、そこの森にきつねが住んでいて、そこのきつねはえらく油揚げが好物だったんだそうです。
そこから、信太のきつねは油揚げが好き。ということで、「信太」と「きつね」と「油揚げ」が連結して、油揚げが入ったうどんは「しのだうどん」と命名されたんだそうです。
 白醤油で仕立てられ、和ネギと刻んだアゲと蒲鉾が入っています。
 うどんの名前はたわいのない名前が多いですね。
 「おかめうどん」は蒲鉾、椎茸、ほうれん草、海苔でおかめの顔を描くんだそうで、松月といううどんは、松が海苔で、月が卵。海苔の上に卵を乗せあつあつの掛け汁を注ぎ、うっすらと雲がかったように見せます。


[連載18回]ジュゴンと海藻

 海草と海藻の違いを調べていて 「アマモ」の種類の「リュウキュウスガモ」という海草を食べて生きている 「ジュゴン」の記事に目が止まりました。
 ジュゴンは「儒艮」と書き、海牛目ジュゴン科の海獣です。 おだやかな性で浅い砂地をゆったりと泳ぎ、人魚伝説のモデルと言われています。 日本では沖縄の北部の沿岸部に小さな群で生息しているそうですが、いま、刺し網による混獲、軍事空港の建設等により生存の危機に瀕しているそうです。詳しくはHPでジュゴンを検索しますと出てきますので、保護活動されている方々のメッセージをお読み下さい。
ジュゴンは広辞苑で調べると海藻を食べると出ていましたが、海草の誤りです。「海草」は顕花植物です。つまりは花が咲き種ができるのです。アマモ、スガモが 代表種で、粗めの砂地で繁茂します。
 「海藻」は岩場で茂り、花は咲きません。ご存じのように、北ではコンブ、温帯域ではワカメ等が代表ですね。 日本では地形的に海藻が育ちやすく、食に色々と利用しています。 日本人はわたしの感で申すのですが、世界で一番利用しているのではないかと思っています。
 食べられる一般的な海藻を思いつくまま上げれば、 コンブ科のアラメ、カジメ。 ワカメ、ヒジキ、ノリも勿論ですし、 酒のつまみに合うモズクがあります、わさびを少し利かせて、さっぱりと。
 アオサのみそ汁は好みです。心太の元、テングサ。 ワカメの根元にひだひだの雌株(胞子)がありますが、それを削いで 細かく刻みます、熱湯を二度ほどかけて湯を切り、醤油を入れ、かきまぜますと トロロ状になります。おいしいですよ。「めひび」ともいわれています。
 海藻は植物か?という設問があります。生物の分類の仕方で「3界説」という考え方があるそうです。
 動物界、植物界、菌界とに分けて、その分類では、植物の内に入るのでしょうが、「5界説」「8界説」になると見解が分かれるそうです。


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《HANZOさん》
名古屋・大須通商店街で生まれ育つ。現在 グラフィックデザイン、WEBデザイン等を仕事にしている。サードワークス代表




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